特定技能 飲食料品製造業分野ーひろがる活躍の場
日本の飲食料品製造業における外国人材の利用は、人手不足解消のキーとなっています。特に「特定技能」制度は、業界における外国人材の確保と活用を促進しています。この記事では、飲食料品製造業における特定技能の概要と現状、そしてその重要性について解説します。
特定技能「飲食料品製造業」の概要
特定技能「飲食料品製造業」は、酒類を除く飲食料品の製造や加工、さらに安全や衛生管理に関わる業務全般を担う外国人材のための在留資格です。彼らは、日本人と同じく、飲食品製造の各過程で専門的な作業をこなすことが可能です。
特定技能「飲食料品製造業」の対象となる業態
- 食料品製造業
- 清涼飲料製造業
- 茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
- 製氷業
- 菓子小売業(製造小売)
- パン小売業(製造小売)
- 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業
です。そのうちの「❶ 食料品製造業」の内訳は以下の通りです。
・畜産食料品製造業
・水産食料品製造業
・野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業
・調味料製造業
・糖類製造業
・精穀・製粉業
・パン・菓子製造業
・動植物油脂製造業
・その他の食料品製造業(でんぷん、めん類、豆腐・油揚げ、あん類、冷凍調理食品、惣菜、すし・弁当・調理パン、レトルト食品等
一部例外を除き小売業は対象外スーパーなどの場合、そのバックヤードで行うお惣菜の調理や加工は「小売業」の一環と見なされ、特定技能「飲食料品製造業」の対象外となります。ただし、例外として、スーパーの経営主体が異なる個別の店舗が調理や加工を行うケースや、バックヤードで製造・加工された飲食料品の売り上げがスーパー全体の売り上げの過半数以上を占める場合は、特定技能の対象とされます。
(※農林水産省|飲食料品製造業分野 技能測定試験についてより。)
飲食料品製造業の現状と課題
飲食料品製造業は、少子高齢化とそれに伴う労働力不足の影響を深刻に受けています。2017年度のデータによると、この業界の欠員率は3.2%に達しており、人材確保が急務となっています。この課題を解決する一策として、「特定技能」制度が注目されています。
特定技能と技能実習の違い
技能実習は、業務範囲が限定的であるのに対し、特定技能ではより広範な業務を担うことが可能です。特に、転職が可能であるため、人材の活動範囲が広がります。また、技能実習から特定技能への移行が多いため、これらの外国人材は、日本の生活様式や言語にすでに慣れており、高い即戦力となる可能性があります。
外国人材と飲食料品製造業の将来
飲食料品製造業における外国人材の需要は増加傾向にあります。特に、技能実習を経て特定技能に移行する人材は、日本の生活や言語に順応しており、高品質な労働力として企業に貢献が期待されます。こうした外国人材の受け入れと活用が、業界の発展に寄与すると見込まれています。
特定技能1号「飲食料品製造」の取得方法
特定技能「飲食料品製造業」1号を取得する方法は複数あり、以下で説明します。なお、2023年に2号カテゴリが拡大し、「飲食料品製造業」も対象となり、2023年秋より2号の試験が始まる予定です。
試験のパス
外国人が特定技能「飲食料品製造業」1号を取得するためには、次の試験に合格する必要があります。
・「飲食料品製造業 特定技能1号技能測定試験」 日本の飲食料品製造業で働くための「技能水準」を確認する試験で、衛生管理や労働安全衛生の知識を測る学科試験、図表を用いた「判断試験」、作業計画を立てる「計画立案」の実技試験から成り立っています。65%以上の得点で合格となります。
・「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」 「国際交流基金日本語基礎テスト」(年6回実施)のA2レベル以上、または年2回実施の「日本語能力試験」N4レベル以上に合格する必要があります。
2号(または3号)技能実習の順調な完了
2号または3号の技能実習を無事に完了し、その技能実習で獲得した技能が将来従事する業務と関連があると認められれば、特定技能1号への移行が可能です。この場合、先に挙げた技能試験や日本語の試験は不要です。
2021年6月より施行されたHACCPを含む衛生管理の知識 2021年6月1日以降、飲食料品製造業などでの事業者は、「HACCP」に基づく衛生管理を実施することが要求されます。このHACCPに基づいた衛生管理の実施能力を持っていることも、特定技能「飲食料品製造業」を取得し、日本で活躍するための条件となります。
HACCPに基づく衛生管理の知識・技能には、主要な食中毒菌や異物混入に関する基本情報、食品を衛生的に扱う基本的な知識・技能、施設設備の整備と衛生管理に関する基本的な知識・技能が含まれます。 ※厚生労働省|HACCP(ハサップ)より
まとめ
今回は、特定技能12業種中、特に企業と外国人材双方からのニーズが高い「飲食料品製造業」に焦点を当てました。
飲食料品製造業における「特定技能」制度は、労働力不足の解消と、業界全体の発展において重要な役割を果たしています。この制度を上手く利用し、外国人材を戦力として確固たる地位に置くことで、業界のさらなる発展が期待されます。一方で、彼らが日本の社会と文化にスムーズに溶け込めるようなサポート体制の充実も必要となるでしょう。
コロナ禍や6次産業化の波に乗り、多くの中小食品メーカーが誕生し、将来を見据えて外国人労働者の活用を進めています。企業が異文化や多様性を理解し、外国人労働者が働きやすい環境づくりを進めることで、日本の飲食料品製造業の未来がもっとも輝くものとなるでしょう。